運動不足でお腹まわりが気になるあなた。脂肪肝ではないだろうか。

ところが、うれしいことにコーヒーを毎日飲むことで脂肪肝の発生を抑えられるという。

 脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が多く蓄積された状態のこと。
肝臓に占める中性脂肪が全肝細胞の30%を超えて溜まった状態を脂肪肝と呼ぶ。
健康な肝臓と脂肪肝の写真を見比べると一目瞭然だ。
脂肪肝の白い部分は中性脂肪である。 脂肪肝の原因は、運動不足とカロリーオーバー。

食べすぎや飲みすぎで肝臓に中性脂肪やコレステロールが溜まってしまうのだ。

脂肪肝が恐ろしいのは、心筋梗塞や狭心症などの心臓病、脳梗塞など血管系の疾患につながるから。

糖尿病、動脈硬化も含め、脂肪肝の人はこれらの病気にかかりやすい。運動不足も禁物だ。

近年は30代から40代の人に脂肪肝が増えており、過去10年間で2倍以上増加したといわれている。

コーヒーは、肝機能を改善する。

血圧を手はじめに、船津さんは次の研究に進む。三越総合健診センターの受診者たちの豊富なデータからコーヒーと肝機能の関係性を調べたのだ。
健康な成人4554人を「アルコールを飲む人・あまり飲まない人」「太っている人・太っていない人」「コーヒーを飲まない人・少し飲む人・たくさん飲む人」の12群に分けて肝機能をみた。すると、アルコールの量や肥満の有無にかかわらず、「コーヒーは肝機能を改善する」ことがわかった。(図3)

実は海外にも同じような結果の研究データがあった。アメリカでは「コーヒーを飲むと肝障害の人でも改善効果がある」、イタリアでは「コーヒーは肝硬変を予防する」というものだ。

その後、国立がんセンターが「コーヒーを多く飲む人ほど肝がんを予防する」というデータを発表。また、2013年10月に発表されたばかりの最新のメタ解析では「コーヒーを1日に3杯飲むと肝細胞がんのリスクが半分になる」という結果も得られているという。

脂肪肝の発生を、抑えるコーヒー。

前述のように、海外では以前からコーヒーと肝臓の関係について研究されていたが、当時の日本には調べている研究者がいなかった。2005年から発表しはじめた船津さんはこの分野の先駆者といえる。

肝臓の研究者として、「コーヒーが肝臓の病気にこれほど効果があるのなら、きっと脂肪肝にも効くはずだ」と考えた船津さん。ところが、海外を見ても脂肪肝とコーヒーに関する研究はなかった。ちょうどNASHが問題化しつつある時期でもあった。

そこで船津さんは健診受診者のデータを用いて、「単年度調査」と「5年間にわたるコーヒー飲量の推移」という2つの研究を実施した。
「単年度調査」は、健康な男性1612人の1日当たりのコーヒー飲量(杯数)を1999年度と2004年度で比較し、腹部超音波検査によって把握した脂肪肝との関係を統計学的に検討したのだ。

各単年度のデータを解析すると、肥満気味でコーヒーを飲む量が少ない人は、痩せていてコーヒーをよく飲む人に比べると脂肪肝が多いという結果が得られた。
つまり、肥満度は脂肪肝に関係していて、コーヒーはその脂肪肝の発生を抑えている可能性があることがわかったのだ。同時に緑茶も調べたが、脂肪肝の抑制効果は認められなかった。(図4)

コーヒーと脂肪肝の、マッチド・ペア研究。

2つめの「5年間にわたるコーヒー飲量の推移」は、正常肝から脂肪肝になった人(A群)と、正常肝のままの人(B群)の2群をつくって比較する「マッチド・ペアテスト」によって行なった。

前記の男性1612人のなかから、1999年度には脂肪肝がなかったのに2004年度には脂肪肝が認められた164人をA群とした。そして健康な人のなかから、A群164人と年齢やBMI(肥満度)、コーヒー飲量が似ている人を328人選び、B群とした。

1999年から2004年にかけて、A群とB群のコーヒー飲量の推移を比較したところ、この5年間で脂肪肝になった人は「コーヒーを飲む量が減っている」ことがわかった。もちろん、正確を期すために、飲酒量や運動量などコーヒー以外のファクターを取り除く回帰分析も行なっている。
それにより、コーヒーを飲むことは脂肪肝の発生を抑制しているだろうと結論づけた。(図5)

船津さんがこの研究成果を発表したのは2005年。ようやく最近になって「コーヒーはNAFLDを抑制する」というデータが出はじめている。

 

船津和夫(ふなつ・かずお)
公益財団法人 三越厚生事業団 嘱託医。医学博士。慶應義塾大学医学部卒業。専門は消化器(肝臓)。東京歯科大学助教授などを経て、1995年財団法人 三越厚生事業団・三越総合健診センター所長に就任。2012年6月から現職。


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