アラビア諸国からヨーロッパに(10世紀初頭-15世紀頃)
コーヒーは10世紀初頭から人々に飲まれ始めたのではないかと考えられています。それは、アラビアの医師ラーゼスが残した記録に、バンと呼ばれる乾燥したコーヒーの実を砕いて水に浸して煎じ、バンカムと呼んで医薬にしていたとかかれているからです。
その約100年後に医学者で哲学者のアビセンナが、バンとバンカムについて、やはり「薬用」だと書き残しています。
このような事から、コーヒーが飲まれ始めた当初は、薬として飲まれていたようです。
その後、長い間コーヒーはイスラム教寺院の中だけに、門外不出の秘薬として伝えられていきました。夜通し行う宗教儀式の前に眠気を払う霊薬として飲まれたのです。そんな中、豆を煎って飲むようになったのは13世紀頃からと考えられています。
13世紀中頃になって初めて、イスラム教の一般信者にその存在が知られ、寺院の回りはコーヒーの露天であふれかえり、人々は、儀式的にお祈りの前にコーヒーを飲むようになったといわれています。
それからメッカ、カイロ、ダマスカスへと伝わっていき、 14世紀中頃には世界最古のコーヒー店「カーネス」が当時のコンスタンチノープルに作られました。
世界的な広まりをみせる中、人々の中でのコーヒーの高い人気に賛否両論が起こり、ついにメッカの地方長官カイル・ベイが「コーヒー禁止令」を発布して最初のコーヒー弾圧をしました。しかし、当時のエジプト国王・サルタンが大のコーヒー好きでありましたので、その「コーヒー禁止令」を知って激しく怒り、すぐさま禁止令を撤回して「コーヒーを飲むのはコーランの教えや宗教上の罪悪にはならない」と宣告しました。
以後コーヒー弾圧は何度か繰り返されます。それだけコーヒーに魅せられる人が多かったということだと思います。
こうして16世紀中ごろにはトルコへ、その後ヨーロッパへと上陸していきます。