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私が子供の頃「コーヒーは体に良くない」という話しを聞いたことがあります。主に胃腸に良くないという話でしたが、中には「肌が黒くなる」などという都市伝説まがいのものもあったように思います。
質の悪いコーヒーならともかく、質の良い珈琲でしたら基本的に体に悪いことは殆どありません。実際に質の悪いコーヒーを飲んで具合が悪くなったか、あるいは黒くて苦いコーヒーのイメージから、そのような話しが出来たのではないかと思います。

【コーヒーの栄養価】

コーヒー(液体)の約99%は水分です。たんぱく質や脂質なども含まれていますが極わずかで、コーヒーから栄養を摂ることはまず出来ません。
もちろんブラックコーヒーならカロリーも殆どありませんから、栄養を摂取できない反面、カロリーを気にすることもありません。

【コーヒーは薬!?】

コーヒーは発見された当時から薬として利用されてきました。胃の薬、頭痛の薬、心臓の薬などなど。中には全く効用の無かったものもあったでしょうが、その殆どは現代でも再認識されています。

最近、様々なメディアでも取り上げられましたが、コーヒーには実に多くの効用(効能)があります。カフェイン、カフェー酸、クロロゲン酸、タンニン、ポリフェノール※1、褐色色素、ニコチン酸(ナイアシン)、トリゴネリン※2などの薬理作用のある成分が含まれていますが、その中でもっとも良く知られていながら、誤解も多いのがカフェインでしょう。

※1:
カフェー酸はキナ酸とエステル結合してクロロゲン酸になります。クロロゲン酸、タンニンは全てポリフェノールに含まれます。タンニンとは「タンパク質・アルカロイド・金属イオンと結合し、難溶性の塩を作る性質を持つもの」をいい、カテキンもこれに含まれます。厳密にはコーヒーの成分の中でタンニンと呼べるものは無いようです。
コーヒーでいうタンニンとはクロロゲン酸類の総称であってタンニンに似た性質を持ちますがその作用は弱く、化学的には別の物質とみなされるようです。

なおポリフェノール(多価フェノール)とは,同一分子内に2個以上のフェノール性水酸基(ベンゼン環などの芳香族環に結合した水酸基)をもつ化合物の総称であり、コーヒーやお茶だけでなく幅広く植物に存在しています。

※2:
トリゴネリンは焙煎中の熱によって殆どが熱分解され、ビタミンB群である必須栄養素のニコチン酸(ナイアシンの一種)へと変わります。

【コーヒーの効用 (効能)】

カフェインは植物界に広く存在するアルカロイド(含窒素塩基性物質)の一種でコーヒー豆の他にお茶の葉やカカオの種子などに含まれています。

アルカロイドの多くは薬理作用を持ち、薬にも毒にもなります。トリカブトの毒、ハシリドコロのロート根から取れるロートエキス、麻薬のコカインなどもアルカロイドの一種です。

※実際にはメチルキサンチン類と呼ばれるカフェイン様物質を総称してカフェインと言っています。お茶にはテアニン、カカオにはテオブロミンがそれぞれ含まれ、薬理作用は似ていますが効果に強弱があります。

以前「カフェインには発ガン性がある」とささやかれたこともありましたが、様々な研究の結果、現在では「カフェインには発ガン性や変異原性はない」という認識で落ち着いているようです。

なにかと話題の多いカフェインですが、薬理作用としては以下のものがあります。

  • 平滑筋を弛緩させることによって気管支喘息や狭心症の改善に作用する(効果は弱いです)
  • 大脳皮質に作用して精神機能、知覚機能を刺激する結果、眠気や疲労感を取り除き、思考力や集中力を増す
  • 中枢神経に作用し、呼吸機能や運動機能を高める
  • 心臓の収縮力を高めることによる強心作用
    (低血圧を一時的に改善)
  • 腎臓に作用して利尿効果を促進する
  • 胃液分泌を促進し、消化を助ける
  • アセトアルデヒド(二日酔いの原因)の排泄を促進する。(二日酔いの頭痛に効果)
  • 脳内の血流を良くすることによって、脳血管性の偏頭痛を静める
  • ボケやパーキンソン病の予防効果

この他コーヒーの効用としては

  • ポリフェノールなどが活性酸素を除去し、過酸化脂質の発生を抑えることにより、肝臓ガンや消化器官のガンなどを予防する
  • 飲酒による肝臓の負担を軽減する。(カフェインの作用とは別に)
  • ニコチン酸(ビタミンB群に属する必須栄養素)が血液中のコレステロール値を下げ、動脈硬化を予防する
  • 皮下脂肪の分解を促進し血液中の脂肪酸を増加させる。結果、持久力が増す。(ダイエット効果あり!?)
  • コーヒーに含まれるフラン類※3-1ニンニクやニラ等の臭いの元を消す※3-2ことによる口臭予防※3-3

などがあります。

※3-1
フラン類とはコーヒーに含まれる成分の内、香りに関係するものの一つです。基本的なものはフルフランとも呼ばれ酸素原子1個を含む5員環の複素環芳香族化合物で文字通り芳香族性を示します。クロロフォルムに似た甘い香りがします

※3-2
ニンニクやニラなどユリ科ネギ属の植物の独特な臭いは揮発性のイオウ化合物が原因です。ニンニクにはアリインという物質とこれに働くアリナーゼという酵素がふくまれており、酸素の存在下でアリシンとα-アミノアクリル酸という物質が生成されます
(ちなみに、このアリシンには様々な薬効があります。例えばビタミンB1と結合して、アリチアミンという吸収性の良い活性持続型ビタミン物質に変化し、新陳代謝を活性化させます)

アリシンは比較的不安定で更にニンニクの悪臭(?)の元、ジアリルジスルファイドに変化します。コーヒーに含まれるフラン類はこの揮発性イオウ化合物の[-SH]基に作用し、無臭化すると言われています。
(コーヒーに限らずお茶などにも含まれる所謂カテキンもこの作用をもっているようです)

なお、フラン類はコーヒー特有の成分ではなくお茶などにも含まれますが、総じてコーヒーの方が含有量が多く、同じお茶でもほうじ茶の方が多いことを考えると、主に加熱(焙煎)の過程で生じると思われます。また、フラン類は必ずしも体に良いものではないので誤解のないようにお願いいたします

※3-3
口臭には口腔内に原因があるものと主に胃の中に原因があるものとに大別できますが、コーヒーが口臭予防として効果を発揮するのは臭いの物質が食べ物に起因する主に後者のものです。特にニンニクの臭いには有効ですが、臭いのメカニズムが一緒のものであれば幅広く効果を発揮します。
ただし、ミルクを入れたコーヒーですとこの作用は弱まるようです。

口腔内の口臭でもニンニク等が原因であれば効果を発揮しますが、条件によりコーヒーが口臭の元となることもあります

更に興味深いのは良く”アロマ”と呼ばれるコーヒーの香りの成分で、DNAの酸化や心臓の老化を妨げる抗酸化作用のある物質が300種以上含まれていると言われています。
その効果は1杯のコーヒーでオレンジ3個分と言われるそうですが、残念なことに淹れたてのコーヒーの香りだけで、5分もするとその効果が無くなってしまうそうです。
(毎日毎日何杯もコーヒーを淹れている店の人間にとってはうれしい話しです。)

コーヒーは肉体的にも精神的にも効用のある飲み物です。集中力と持久力を増すため、一流のスポーツ選手(マラソンやサッカー、プロ野球の投手など)の中には、二時間ほど前にコーヒーを飲んで競技や試合に望む方もいると聞きます。


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