パーキンソン病は神経変性疾患のひとつで、ある特定の神経細胞群が徐々に障害を受けることにより、機能しなくなっていく病です。
日本ではおよそ15万人が罹患していると推定されています。近年、治療法は飛躍的に進歩していますが、根本的な治療法の開発にはいまだ至っていません。
カフェインが細胞死を抑制
鳥取大学医学部准教授の中曽一裕先生は、コーヒーに含まれるカフェインに着目し、パーキンソン病の根本治療につながる神経細胞の保護作用について実証実験を行っています。実験では、培養細胞に毒性物質を加えて細胞死を引き起こし、そこへ濃度の異なるカフェインを投与しました。すると、投与したカフェインの濃度に応じて細胞の生存率が上昇し、細胞死を抑制することが示されました。同時に、カフェインの投与により、神経細胞の生存に重要な「シグナル伝達経路(細胞と細胞の情報交換経路)」が活性化することも分かりました。
クロロゲン酸が神経細胞を保護
さらに、中曽先生は、コーヒーに含まれるカフェイン以外の要因や相互作用を探るべく、クロロゲン酸に着目しました。α‐シヌクレイン(たんぱく質)は重合(分子化合物が結合して別の化合物を生成する現象)することで細胞死を引き起こすため、パーキンソン病の発病の重要因子とされています。そこで、α‐シヌクレインが重合することで神経細胞が死んでいくモデルを作り、クロロゲン酸の濃度を変えて、投与したところ、クロロゲン酸がα‐シヌクレインに結合する分子の酸化を防ぎ、α‐シヌクレイン重合を抑制することが分かりました。クロロゲン酸には神経細胞を保護する働きがあることが実証されました。
2つの実験により、カフェインやクロロゲン酸がパーキンソン病の発症を抑制する可能性が示唆されました。今後、さらに研究がすすみ、根本的な治療につながることを期待したいですね。
(参考)全日本コーヒー協会 コーヒーとからだのおいしい話4