コーヒーは当初、「食べ物」だった!?

時は6世紀。アフリカ・エチオピアの高原に群生している木々。その木は白い花をつけ、小さい実をつけていました。この実をヤギが食べて興奮しているのをみつけた山羊飼いの少年が、自ら実を食べてみたところ、うん、これはなかなかいける!この評判を耳にした修道僧達がこぞってこの実を食べてみると、力が沸いてくるような不思議な感覚を抱いたとか。それが、コーヒーの起源といわれています。

その実をつけたのはアカネ科の植物「コーヒーノキ」。ちなみに、アフリカは「人類起源説」があるほど、古くから人が住んでいたといわれる地。コーヒーノキも6世紀以前からあったかもしれないと考えると、人類とコーヒーの出会いはもっと古かったかもしれません。

一般的に「コーヒー豆」と呼ばれるものは、コーヒーの実の種子にあたる部分です。「豆」と呼びつつも「種」だったんですね。しかしコーヒーノキの実にも若干のカフェインが含まれており、冒頭にあるようなことが起こったといわれています。この他にもコーヒーの起源は諸説あるのですが、興味深いのは、当初コーヒーは「食べ物」として機能していた点です。エチオピアの民は、コーヒーの実をすりつぶして動物性の油脂を混ぜ合わせ、団子のように丸めて食べていたとか。その後、実と種子を煮て食べる過程で、「煮汁」を飲むスタイルが広まり、やがて種のみを乾燥させたり、煎ったりしたものを粉状にする手法が生まれたのは13世紀になってからとのことです。

少し時間を戻して、10世紀。アラビア人の医師、ラーゼスが、有史以来初めてコーヒーに関することを記述したといわれています。しかもラーゼスは、コーヒーの消化作用や利尿作、健胃作用についてまで記していました。つまりコーヒーは「薬」としての側面も持っていたのです。

トルコでは「占い」に、日本では「薬」に

その後、コーヒーは世界を駆け巡ります。各地のコーヒーの特色を紹介しつつ、そのルーツにスポットを当ててみましょう。

トルコ 「ターキッシュ」、つまりトルコのコーヒーです。コーヒーにはアラビア起源説もあり、アラビアからヨーロッパへ広まる中継地点として16世紀中頃、トルコに流入。首都イスタンブールにはコーヒーショップ「カーヴェハーネ」も登場し、貴族や僧侶の飲み物から、一般大衆の飲み物として広がりをみせました。

ターキッシュコーヒーは「煮出す」コーヒーです。粉を水に溶いて砂糖を入れてからトロ火で熱し、泡が立てばできあがり。一般的なコーヒーに比べると、濃厚な味を楽しめます。このコーヒーをいかに美味しく作れるかが、「良い花嫁」の条件であるとか。また、お見合いの返事も「OK」なら砂糖を入れた美味しいトルココーヒーを見合い相手に出し、お断りする場合は砂糖の代わりに塩を入れるんだとか。断られた上に塩辛い・・・トルコの男性にはちょっと同情しますね。

ちなみに、コーヒーを飲み終えてからソーサーをカップの上に置き、ソーサーとカップを押さえながらクルリと逆さまに。カップが冷めたら元通りに戻すと、沈殿していたコーヒーのかすがカップの内側に模様を描いています。これで運勢を占う「コーヒー占い」もトルコでは日常的に見られる風景。「お茶の時間を楽しむ」コツを知っている人達だなぁと思います。

アメリカ
かつてイギリスの支配下にあったアメリカゆえ、「紅茶」のほうが浸透したはずでは?と思う方もいらっしゃると思いますが、ご存知の通りちょっと薄味でライト感覚の「アメリカンコーヒー」をはじめとするコーヒー文化が成り立っています。

しかし以前はアメリカも「紅茶」文化でした。これが一転した契機といわれているのが、1773年に起きたボストン茶会事件。東インド会社による紅茶貿易の独占、さらに重い関税をかけて値が高騰したことに憤慨した人々は、ボストン湾に停泊していた船を襲撃して紅茶の入った箱を海に投げ出しました。これが火種のひとつとなって、やがてアメリカは独立を志すようになったといわれています。縁の切れ目が紅茶の切れ目、ひいてはそれがコーヒーの台頭につながったといえるでしょう。

日本
日本にコーヒーが入ってきた時期には諸説ありますが、およそ江戸時代といわれています。しかも当初は「薬」と見なされていました。そのエピソードを物語る記念碑が、日本最北端の地、宗谷岬にあります。

宗谷岬には探検家、間宮林蔵の像や「日本最北端の地の碑」があることで知られていますが、意外と知られていないのが「津軽藩兵詰合の記念碑」。この記念碑は、大きなコーヒー豆をかたどっているんです。江戸時代、北方警護のために幕府は東北の藩士達を宗谷の地に派遣。極寒の地で過ごす藩士の養生のため、当時は物珍しかったコーヒー豆を配給しました。それでもあえなく、この地で多くの藩士が命を落とし、彼らを供養する意味でコーヒー豆の記念碑が建てられたのです。

 


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