ハワイでカフェ関係者と話をしていると、「日本人のおかげで今がある」と度々、感謝の言葉を口にされる。その背景を知るには、日本・ハワイ間で移民条約が締結された1885年まで遡らねばならない。1894年までの9年間に、政府の斡旋で約3万人の日本人がハワイに渡り、彼らはさとうきびやコーヒー豆の収穫を行う労働に従事していた。
時を同じくして1890年代、世界のコーヒー市場でコーヒー豆の価格が高騰すると、欧米の投資家がコナの大規模コーヒー農園に投資を開始。第1次ハワイ産コーヒーブームが到来。しかし、10年後にはコーヒーの過剰供給により価格が急落したため、大打撃を受けた大規模コーヒー農園は打開策として土地を5~15エーカーほどに細分し、小作人にリースした。多くの移民が、市場が安定しているさとうきび栽培に鞍替えする中、日系移民だけはコーヒー栽培を継続。1910年頃、リース契約から独立農家になると、コナのコーヒー農家の80%を日系移民が占めたという。
日本のKissatenの影響を受けた、最新トレンド。
第2次ブームは2000年。ラベリング法の制定により、店舗で包装販売するコーヒー豆の内容記載が義務化され、消費者が100%ハワイ産のコーヒー豆を見極められるようになると、観光客の土産品として人気が再燃した。
ハワイコーヒー協会取締役会役員のスティーブ・コレクター氏は、上記の流れを汲んだ最新トレンドについてこう語る。「近年、各島のプライベート農園ブランドや小さな焙煎会社のコーヒー豆が人気を集めています。ファーマーズマーケットのブームで、農家が直接、消費者に販売できる環境が整ったことが一因です」。中でも注目されているのは、ハワイ島のカウ・コーヒー。世界バリスタ選手権やアメリカのカッピング大会で好成績を収め、大手コーヒーチェーンがハワイ産コーヒーの代名詞として取り扱いを始めたほどだ。
もう1つの大きなトレンドとして、「1杯ずつコーヒーをいれるシングルサーブの人気に伴い、自ら豆を焙煎し、コーヒーを抽出する職人気質のオーナーが台頭してきたこと。これは日本のKissaten(喫茶店)の影響を受けているといわざるを得ない」と、コレクター氏は分析。目の前の1杯がどのように作られているかを知りたいという消費者の欲求が高まってきたことが1つと、ハワイには世界中からの移住者が多く、ハワイ産コーヒー豆のポテンシャルを評価している彼らが、豆の味をもっと伝えようと焙煎や抽出法にこだわった結果、日本のKissaten方式に行き着いたのだとか。実際、取材で訪れた「ビーチ・バム」のオーナー・デニス氏は「日本には味にこだわりつつ、SNSを使って集客に成功しているKissatenがあるそうだ。参考にしたい」と、約6,000キロ離れた日本の情報を熟知していた。
提供者と消費者との相乗効果で、底上げされた感のあるハワイ産コーヒー豆。今が第3次ブームの真っ只中といえるかもしれない。